お葬式の基礎知識

死亡の知らせを受けたら

とりあえずの弔問

遺族が臨終直後に訃報を知らせるのは親しい間柄の人です。したがって、連絡を受けたら、すぐにかけつけるのが礼儀です。お悔やみの言葉を述べ、場合によっては手伝いを申し出ましょう。この場合、喪服での弔問は予期していたようで失礼ですから平服でかまいません。また、香典を用意する必要はありません。

故人との対面

故人との対面は、自分からは申し出ないのがふつうです。遺族からすすめられた場合は、「ではひと目…」と答え、お辞儀の姿勢で待ちます。遺族が白布を上げたら、ひと目見て一礼します。気がすすまないときは、「悲しみがましますので」と辞退してもかまいません。

お悔やみの言葉

お悔やみの言葉は、「静かに言葉少なく」が基本です。遺族の気持ちを思いやり、故人の冥福を祈る言葉を素直に表現すればよいでしょう。一般的な言葉は、「このたびはご愁傷さまでございます」「このたびは誠に思いがけないことで、心からお悔やみ申し上げます」などと述べます。死因についてしつこく尋ねたりしてはいけません。また「かさねがさね」「かえすがえす」などの忌み言葉はタブーです。

弔問の作法

通夜でのマナー

最近の通夜は、告別式に出席できない人のためのお別れの式という意味合いが強く、出席者の告別式より多くなっています。午後6時~7時ごろに始まり、1~2時間程度で行なわれる「半通夜」形式がふつうです。出席する場合は、開始の10分くらい前には受付をすませます。入室後は、喪主や遺族にお悔やみの言葉を述べます。通夜の後に通夜ぶるまいの席を勧められたら、できるだけ出席するようにします。ただし、大声で話したり、酔うほどに酒を飲むなどは避けたいものです。故人を偲び、静かに語り合いたいものです。

葬儀でのマナー

葬儀に参列する場合は、遅くとも定刻の15分前には会場入りします。告別式のみに出席する場合は、予定時間内に焼香すればよいわけですが、終了間際にかけつけるのは失礼です。受付は通夜と同時にすませますが、通夜に香典を持参したときは重ねての香典は不要です。また、葬儀・告別式では遺族席へ出向いてお悔やみを述べる必要はありません。会葬者は、よほどの事情がないかぎり、出棺まで見送るのが礼儀です。出棺の際は、合掌や黙祷で故人の冥福を祈ります。

葬儀後に訃報を知った場合

まずは喪家に電話をし、弔問が遅れた理由を述べ失礼を詫びます。先方の都合を聞き、弔問に訪れたい旨を伝えます。香典を持参し、できれば四十九日までに出向きます。香典の表書きは、仏式では「御霊前」ではなく「御仏前」にします。香典返しの面倒をかけないように、金額は控えめにし、「お返しの心遣いはなさらないでください」などと申し添えるとよいでしょう。

ワンポイントアドバイス

焼香の回数は宗派によって異なりますが、回数にこだわる必要はありません。「正式には三回」などといわれていますが、会葬者が多い告別式などでは一回でのかまいません。回数ではなく、心がこもっていればよいのです。

宗教別拝礼の仕方

仏式葬

焼香は、通夜では線香を上げ、葬式・告別式では抹香を用いるのが一般的です。また、会葬者が多いときは立礼で、少ないときは座礼で行なわれることが多いようです。焼香の順番は、葬儀の場合は席次順、告別式の場合は先着順が原則です。年長の人より先にすませてもかまわないので、間をあけずに手際よく行なうようにします。数珠は正式には必要とされていますが、なくてもかまいません。

焼香の上げ方
①合掌の後、線香を1本とってロウソクの火を移す ②左手であおって火を消す(火は吹き消さない)。 ③香炉に立てて、合掌する。
抹香の上げ方
①右手の親指、中指、人差し指で香をつまむ。 ②目の高さにささげ、香炉に落す。 ③合掌し、遺影を見て一礼する。
立礼の作法
①僧侶と遺族に一礼。焼香台の少し前まで進み遺影を見て一礼し、さらに一歩進んで合掌。焼香をして合掌して一礼。そのまま二、三歩下がる。 ②僧侶と遺族に一礼してから、向きを変えて戻る。
座礼の作法
①腰を低くして遺族の前へ進む。 ②座布団の少し前に座り、僧侶と遺族に一礼し、遺影を見て一礼。 ③両手をついて膝でにじりより、座布団に座って焼香。
④合掌する(立礼と同様)。 ⑤膝をついたまま座布団から下り、僧侶と遺族に一礼して席へ戻る。
神式葬

仏式の通夜にあたるのが通夜祭、葬儀・告別式を葬場祭と呼びます。いずれも神社の神殿では行なわれず、自宅や斎場などに神官を迎えて行ないます。神式葬儀では、すべての儀式の前に「手水の儀」で手を清めてから参列します。斎場などの入り口には、水の入った桶とひしゃくが用意されているので、必ず手水を使うようにします。
仏式の焼香にあたるのが玉串奉奠です。一般の弔問客も玉串奉奠を行なうので、最低限の作法は覚えておくようにしましょう。玉串奉奠では、最後に二礼 二拍手一礼しますが、このときの拍手(柏手)は、「しのび手」といって音をたてないようにします。
なお、「逝去」「供養」「冥福」などは仏教用語ですから、弔辞や弔問、弔電の祭には混同しないように気をつけたいものです。

玉串奉奠
①神職に一礼して、玉串を受け取る。右手で枝の根元を上から、左手で葉のほうを下から捧げもつ。 ②玉串案に進み、目の高さに捧げて一礼。 ③一歩進み、玉串の根元を自分の方に向ける。
④玉串を時計回りに180度回し、根元を祭壇に向けて置く。 ⑤一歩下がり、二拝する。 ⑥音をたてずに、二度柏手を打ち、一礼する。
キリスト教式葬

キリスト教式はプロテスタントとカトリックでは手順が異なります。しかし、いずれの場合も進行役が指示してくれるのであわてることはありません。ふつうは受付で賛美歌や聖書の一節が印刷された式次第が配られるので、信者でない人もこれを見ながら賛美歌や聖書を唱和します。わからなければ静かに耳を傾ければよいでしょう。
一般に教会で行なうのがふつうで、会葬者も葬儀から参列します。告別式では仏式の焼香にあたる献花を行い、故人とのお別れをします。

献花
①右手で花のほうを下から持つ。 ②献花台に進み、一礼。 ③花が手前になるようにして花を置く。 ④頭をたれて黙祷する。聖職者や遺族に一礼して席に戻る。

香典の知識

金額の目安

香典の金額にはとくに決まりはありません。故人や遺族との関係で判断するものなので、自分と同じ立場の人と相談するのもよいでしょう。不祝儀に新札を使うのは、用意していたようで避けるべきですが、やはり人に贈るお金なので、できるだけきれいなお札を使います。なお、お札の枚数は奇数になるようにします。

体裁と表書き

市販の不祝儀袋を使用します。「二度と繰り返されない」という意味を込めて、水引は黒白や黒銀白の結び切りにします。表書きは宗教によって異なりますが、「御霊前」はどの宗教でも使えます。蓮の花の模様のある不祝儀袋は仏式だけなので注意が必要です。薄墨で書くのが作法ですから、ペンなどを使うときも黒々と書かないようにします。
上包みにはフルネームで名前を入れます。会社関係などの場合は、個人との関係がわかるように名刺を添えるとよいでしょう。中包みには金額、氏名、住所を忘れずに記入します。

香典を渡すタイミング

逝去の知らせを受け、とりあえずの弔問の場合は香典を持参する必要はありません。用意していたようで、持参するのはかえって失礼です。通夜、葬儀・告別式のいずれかに出席するときに持参します。受付でお悔やみの言葉を述べ、記帳して香典を渡します。受付のない場合は、お悔やみの言葉を述べたときに喪主か遺族に渡します。

ワンポイントアドバイス

通夜、告別式ともに出席できないときは、現金を不祝儀袋に入れて、お悔やみ状とともに現金書留で送ります。急いで送りたいときは、電信為替やマネーレタックスを利用するのも便利です。いずれも郵便局で取り扱っており、メッセージを添えることもできます。

供物・供花・弔電

供物・供花の贈り方

供物はくだもの、菓子、ろうそく、線香などが一般的です。神式では線香を使わないので、代わりにお神酒を贈ります。供花には生花と花輪があります。生花は白一色か、白い花に黄や紫の花をそえてまとめる場合が多いようです。最近ではしきたりにとらわれず、淡い色の花を使用することもあります。故人が好きだった花などを贈れば、遺族にも喜ばれるでしょう。なお、キリスト教式では、供え物は生花のみとなります。
いずれの場合も、故人の意思で受け取らない場合もあるので、事前に遺族か世話役に相談しましょう。贈るときは、祭壇の飾り付けの都合があるので、できるだけ早めに手配します。
花輪は、葬儀社などに注文します。ただし、路上に並べるためスペースの関係上断っていることもあるので、必ず事前に確認しましょう。また、花輪は基本的に団体か公的立場にある人が贈るものです。個人の場合は生花が無難です。

弔電の打ち方

出張中や病気療養中など、弔問に行けない場合は弔電を打ちます。弔電の宛名は必ず遺族宛に打ちます。故人の名前は知っていても、喪主の名前がわからないというケースでは、「故人名」に「ご遺族様」と付け加えればよいでしょう。なお、葬祭ホールなどで行なわれる場合は、「〇〇ホール気付・喪主名様」とします。申し込みは局番なしの115番で、NTT発行のハローページ文例が出ています。刺しゅう電報、おし花電報など、さまざまなデザインが用意されています。

ワンポイントアドバイス

メッセージ電報と一緒に供花を贈りたいという場合は、NTTのフラワー電報を利用すると便利です。供花はアレンジ、花かご、スタンド式があり、1万~3万までと予算に合わせて選べます。一部利用できない地域があるので、詳しくは115番へ問い合わせを。

弔辞を依頼されたら

弔辞の心得

弔辞を依頼されたら、よほどの事情がないかぎり応じるのが礼儀です。遺族から弔辞を頼まれたら、「わたくしでよければ」などと控えめに引き受けましょう。また、故人ととくに親しく、ぜひ弔辞を読みたいと思えば、申し出てもかまいません。その場合は、早めに遺族か世話役に申し出るようにしましょう。

弔辞の書き方

弔辞は巻紙か奉書紙に、薄墨の毛筆で書くのが正式です。ペン書きでもかまいませんが、弔辞は遺族が長く保存しておくものなので、楷書で丁寧に書くようにしましょう。どうしても自信のない場合は、代筆を頼むこともあるようです。
弔辞の内容は、あまり難しいものにする必要はありません。故人の人柄が伝わり、自分の思っていることがそのまま表現されればよいのです。時間は3分程度(400字詰原稿用紙で2~3枚)が目安です。内容は故人と自分の関係を述べ、故人の人柄を感じさせるエピソード、業績を紹介し、最後に遺族へのお悔やみの言葉、故人の冥福を祈る言葉で結びます。

弔辞の読み方

司会者に呼ばれたら、祭壇の前に進み、遺族、遺影に一礼。奉書から弔辞を取り出し、読み上げます。はっきりとした口調で、あわてずゆっくりと読むようにしましょう。弔事の長さを確認するためにも、事前に声に出して練習しておくとよいでしょう。読み終えたら奉書に包み、祭壇に供えて一礼して席に戻ります。

服装のマナー

通夜の服装

地味なものであれば平服でかまいません。ただし、男性は黒ネクタイを着用し、明るめの色のスーツの場合は、左腕に黒の喪章を付けます。女性は、化粧やアクセサリーは控え目にします。

葬儀・告別式の服装

一般の会葬者の服装は略式礼装がふつうです。男性の場合は黒または濃紺のダークスーツに黒ネクタイを用います。靴下・靴も黒で統一します。女性の場合は、洋装なら黒無地のワンピースかスーツで、バッグや靴なども黒にします。ストッキングは黒または肌色です。デザインはシンプルなもので、夏でもあまり肌を露出しないようにします。和装の場合は、地味な色無地の着物に、帯や小物類も黒にします。いずれも化粧は控え目にし、アクセサリーは真珠のみが許されます。

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